運動器による慢性痛の治療ゴールについて

 慢性痛には頭痛やがん性疼痛など様々な領域の痛みが含まれますが、運動器による慢性痛で悩まれている方が増えています。

 運動器による慢性痛の患者さんは、その多くは現在の痛みを何とか軽減してほしいという思いでいっぱいですが、痛みをゼロにすることを治療のゴールにする訳ではありません。

 運動器による慢性痛は、多くは加齢的変化によるものが多く、治療のゴールは各個人の生活の質や日常生活動作の向上であり、決して現在ある痛みをゼロにすることではありません。今日一日どれくらい痛かったというよりも、今日一日どれくらい痛みのためにしたいことができなかったかが問題なのです。多くの慢性痛では完全に痛みを消失し得ないことが多く、むしろ痛みがあってもそこにこだわらず、生き甲斐のある生活を送ることができるのが最も重要な目標のひとつです。

 痛みは、痛いということを認知する感覚と、それを不快に感じる感情から成り立っています。最近の脳科学の進歩により、慢性痛に対して脳で効かせるようなてんかんやうつ病の薬が有効なことがわかっています。また、非がん性慢性痛に対してより鎮痛効果の強いオピオイド鎮痛薬も使用できます。慢性痛に対する考え方・治療も進歩しており、整形外科医と良く相談し、生活の質の向上を目標に治療のゴールを考えてみてください。